テキスト補足その2 | 一目均衡表日記

テキスト補足その2

 均衡表原著を読むと、一目山人の相場変動論が多くの先人達の方法論を模したものでである事、山人の告白から判ります。哲学、論理学の先人達を模しているとは言うものの、その解釈、活用方法が極めて独創的といえるのですが、私は知識が増えるにつれ、山人の仏教研究者(この様に言うと祖父は怒るでしょう、自分は単なる仏教者であると)としての質の高さに改めて驚いたものであります。


 例えば相場変動は西洋論理学では捉える事は出来ない。東洋論理学でなければならない。という記述をご記憶の方は多いかと思います。このコメントに対するテキストとして井筒俊彦の晩年の著作である「意識の形而上学」という本を興味がある方には読んで頂きたいと思います。

故井筒氏はイスラーム学の世界的権威でありまして、岩波文庫からも「コーラン」「イスラーム文化」等判りやすく、優れた書籍が多くありますが、晩年の研究テーマは東洋思想の論理構造について明らかにする事であったようです。

東洋論理学の特徴は二点ありまして、一つは人間の認識をも含めて論理が展開していく事、もう一つは西洋哲学と異なり、言葉も論理も常に両義的意味を持つ、という事であります。

私は色々と本を読んでおりますが、井筒氏ほど明晰に東洋哲学の本質を語っている人を知りませんでした。一目山人はさらに以前からこの本質について理解、整理出来ている事に驚きました。


 例えば「準備構成」一つにしても上げ相場の為の準備構成が、ある時間を経過し、一本の騰あるいは落によって直ちに下げの準備構成として意味内容を変える。という相場変動論は西洋論理学で説明出来るかどうか疑問であります。

 それは別として、これらに対して理解が深まった事で私の波動論に対するこだわりは更に強くなりました。

三波動を基本として変遷を捉える、という事自体、実は相場の「方向」という両義的意味合いの強い概念を明確にするための最大の工夫である事が理解できたからでありますが、一般の方は勿論ここに書いたような事を知らねばならない訳ではありません。