コナン・ドイル  その2 | 一目均衡表日記

コナン・ドイル  その2

「緋色の研究」延原謙訳、新潮文庫


シャーロックホームズが自分の方法論について語る場面は、さすがに一番初めに書かれた「緋色の研究」が一番多いので、そこから興味深いものを抜粋います。


「いつかも話したとおり、異常な事柄というものは手がかりにこそなれ決して邪魔になるものじゃない。こうした事件を解くにあたって大切なのは過去にさかのぼって逆に推理しうるかどうかだ。」

「これはきわめてちょうほうなたしなみで、しかも習得しやすい事なんだが世間じゃあんまり練習する人もいない。」


「ある出来事を順序を追って話していくと、多くの人はその結果がどうなったかをいいあてるだろう。彼らは心の中で、ここの出来事を結び合わせてそこからある結論を得るのだ。しかしある一つの結果だけを与えられて、はたしてどんな順序をへてそういう結果に立ち至ったかということを、考えてすらすらと言い当てうるものはほとんどいない。これを考えるのが僕の言う逆推理、すなわち分析的推理なんだ。」



さてこれを罫線に、当てはめて考えてみましょう。

今回の4月7日から6月14日までの下落を(あるいは5月8日からの下落でも良い)「経験則の当てはまらぬ相場」とコメントしていた人がいました。

私は当てはまらぬとも思いませんが、まあ当てはまらぬとして、重要な事はその人にとって、この下げが一種異常な状態である、ということであります。

異常な状態であるという認識を持った以上は、先に持っていた相場観が正しいか、誤りであるかを確認した上で、正しいと信ずれば異常事態が正常化することをどのように確認すべきか、に認識が移っていかねば、何の為に「経験則の当てはまらぬ相場」とコメントする必要があるでしょうか。


罫線のだましの類も同様で、実際のところごく単純な論理(これを一貫させる事は難しいですが)を通して相場を辿っていれば、罫線が機能しない瞬間こそ「上げ」「下げ」を明確に出来る事が多いのであります。


さてシャーロック・ホームズにお楽しさは彼の推理が単なる謎解きに終始していない点にあります。

依頼者の安全を守る、犯罪を未然に防ぐというごく当たり前の目的を見失わない点も大いに勉強になるのであります。


明日も続きを。