「物理の散歩道」 ロゲルギスト著 岩波書店 | 一目均衡表日記

「物理の散歩道」 ロゲルギスト著 岩波書店

 少し軽い本を。

ロゲルギストは外国人の名前ではなく、何人かの日本人執筆者の総称でありまして、ブルバキを意識したサイエンスエッセイと言うべきものでしょうか。


最近の科学に関するエッセイはどちらかと言えば疑似科学批判に終始するものが多い印象ですが、1960年代発行のこの本には窮屈さがありません。

ロゲルギストの由来はlogosとergonでありますが、情報とエネルギーの面から物理現象を見直す、という事らしく、なかなか面白い本であります。


特に私が印象に残ったエッセイは第4巻の「理解の形式」というエッセイでありますが、例えば数の数え方一つをとっても人によって随分異なるという主張は面白く読みました。

1、2、3と順番に数えていく方法は頭の中に数の唱え方が記憶されており、それに対応させて物を数える方法で「表音」的数え方である。

一方で3個、4個、5個、といったブロックごとに数える方法。これは3個なり、5個なりの配置パターンが記憶されているような数え方で「印画」的数え方。例えばさいころの目など。

実際には両者の併用であることが多いでしょうが、この事によって年齢や金額に対するイメージが大きく変わってくるというものでありました。


一目山人は基本数値に関しては随分個人的に検証を重ねておりまして、「42日間の尋問に耐えられる容疑者はいない」といった話を聞いたことがあります。昔の人権無視の尋問と現代とでは相違点があるでしょうし、人々の生活サイクル等も違うでしょうが、上の話と併せて大変興味深いと思います。